Komatsu Nine

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【KOMATSU NINE MEETING】vol.3「地元の人と触れ合いながら楽しめる町で」辻奈穂子(滝本茣蓙店)

【ポットキャスト(前半)はこちらから】

「KOMATSU NINE MEETING」は、Komatsu 九 2周年を機に、少しだけ形を変え、地域で暮らす/働くゲストと、聞き手との対話を通して、小松の日常にある“続いていくもの・変わっていくこと”を考えていく対談企画として再始動いたします。

第3回目のゲストは、龍助町にて「滝本茣蓙店」を営む辻奈穂子さん。

<滝本茣蓙店 店主/辻奈穂子さん>
小松駅近くの龍助町で「滝本茣蓙店」を営む。
店内では、インテリア用品やござ・すだれ・のれんをはじめ、アンティーク家具や古道具など、空間を彩る幅広い品々を取り扱い、滝本家としては約600年、茣蓙屋としては260年の歴史を受け継いでいる。

<聞き手:小林太一>
山梨県生まれ。大学を卒業後、都市銀行や農業ベンチャー企業に勤務。
2022年、小松市が公募した特定任期付き幹部職員に採用され、小松市観光交流課で勤務。
2025年6月より、(株)こまつ賑わいセンターの代表取締役社長に就任。



目次
1 、滝本茣蓙店の歩み
2、「25歳からでも大丈夫ですか?」伝統と出会い直す旅
3、「続きは、まちなかで」人と町が織りなすこまつの時間


小林「今回は、小松市龍助町にある『滝本茣蓙店』におじゃましています。
店主の辻さんに、小松市の変化とともに続いてきた『滝本茣蓙店』や町の物語について、お話を伺っていきます。」
1、  滝本茣蓙店の歩み

「小松では、前田利常公の隠居をきっかけに260年前から茣蓙の商いが始まりました。」北陸の雪に耐えた「小松い草」は丈夫で人気があったそう。

「当時、龍助町には20軒以上の茣蓙屋が並んでいたんですけど、畳の部屋が減って茣蓙の需要も落ち、店は次第になくなっていきました。

そんな中、当時店主だった父が『なんとかしなくてはいけない』と、20歳の頃に岐阜・高山の上三之町を訪れた際に、初めて藁でつくられた草履や竹で編んだ竹かごなどの民芸雑貨を見たそうで。『これをうちの店で売ったら面白いんじゃないか』と可能性を感じて、天然素材の茣蓙と雑貨をミックスした店づくりが始まりました。」

「当時珍しかった民芸雑貨は地元でも好評で、その後外国雑貨も取り入れたりなど、時代に合わせて少しずつ変化を重ね、今の滝本茣蓙店に至ります。」


「地域や国が違っても、インテリア文化や民芸品は奥深く、融合させても意外と合うんですよ。」

2、「25歳からでも大丈夫ですか?」伝統と出会い直す旅

小林「時代に沿ったお店作りが歴史を紡いできたんですね。そんな滝本茣蓙店がある龍助町ですが、『お旅まつり』の中で、今年は当番町でしたね。伝統が近くにある町で育つのはどのような感じですか?」

「私も小学3年生のときに龍助町の曳山こども歌舞伎に出演しました。当時はよく分からないまま参加していましたが、大人になってからひしひしと貴重な体験ができたんだと感じています。今年は娘が出演しましたが、いつかふと思い出して、何かの肥やしになればいいなと思います。」
2025年度「お旅まつり」の様子

「このまちでは、『お旅まつり』があることによって、子どもの頃から自然と祭りに関わって、誰に教えられたというわけではないけれども、大人になって伝統文化を次の世代へ受け継ぐという意識が根づいていますね。」

小林「外から来た自分にとって、“文化”は敷居が高いイメージだったんですけど、小松は文化が暮らしに馴染んでいますよね。僕もその雰囲気が好きで、楽しんでいます。」

小林「そんな伝統文化の町に構えるお店ですが、印象に残っている経験はありますか?」

「自宅がお店とくっついているので、幼い頃は『ただいま』と学校から帰るとお客さんがいました。飾り付けのお手伝いをしたり、お店は遊び場のような感覚でしたね。」

店内の様子

「海外雑貨を扱っていたこともあり、店で過ごしているうちに自然と外国にも興味を持つようになりました。いつか行ってみたいな、と。」

「大学を卒業して3年間社会人として過ごした後、大好きだったタイへ思い切ってひとりで行ってみたんです。それがすごくいい経験でした。」

小林「どのような刺激があったんですか?」

「タイでは、私が “日本人代表”みたいな感じで、『日本の食べ物は何があるの?』『日本のダンスはどんな感じ?』と現地の方に色々な質問をされました。そこで、自分が日本の伝統文化についてあまり知らなかったことに気がついたんです。」

「それで帰国した後に、小松の祭りに参加した経験をふと思い出して、『そうだ、日本舞踊を習ってみようかな』と思いついて。藤蔭流の先生に『25歳からでも大丈夫ですか?』と聞いたら、『どうぞどうぞ。』と受け入れていただき、【藤蔭 真穂】という名をもらって、10年ほど習わせてもらいました。」

日本舞踊に励む辻さんの様子(平成20年発刊の雑誌より)

小林「雑誌を見ても、すごく楽しそうにやってらっしゃるのが伝わりますね。」

「隣に写っている先生が本当にすごい方で、『80歳になっても死ぬまで毎日勉強や』と仰っていたのを、ずっと肝に銘じています。」


3、「続きは、まちなかで」人と町が織りなすこまつの時間

小林「いつもさまざまなことに積極的に参加されたりチャレンジされてますが、町では何かしらの変化や新しい刺激はあるものですか?」

「龍助町ではまちを綺麗に整備していこうということで、平成26年から無電柱化の工事が始まりました。これを機に、ハードだけでなくソフト面からもまちを盛り上げていこうと、店主たちで【賑わい協議会】を起ち上げたんです。そこから“まちづくり”が始まったのですが、これは新しい挑戦でしたね。」

「【北國とおり町ch】というYouTubeチャンネルをはじめたり、大きなイベントに合わせて龍助町を歩行者天国にし、マーケットを開催したり、地元の高校生とのコラボしたり…さまざまな取り組みを行っています。」


「最初は何をどうすればまちに賑わいが戻るのか分からなかったけど、自分たちができることから少しずつ始めています。店主同士も仲が良く、『思ったらすぐやってみよう、失敗してもいいじゃないか』という空気があって。もともと観光エリアではないけれど、まずは地元の人が回遊して楽しめるまちになれば、自然と外の人も訪れてくれるのでは、と思っています。私たちがアクションを起こすことで、まわりのまちにも輪が広がっていくことを夢見て頑張っている最中です。」


イベントの様子(辻さん提供)

小林「さまざまな新しい取り組みや情報発信、交流の場を広げていく中で、新しい人とのつながりや出会いというのもあったのではないでしょうか?」

「そうですね。もちろん色々な出会いがありましたが、小林さんが来たっていうのも大きいです。」

小林「いやいやいや!(笑)」

「小林さんは、人と人とを繋ぐ接着剤のような人で。私たちだけの力だけじゃ限界があったんですけど、やっぱり小林さんが来てくれたおかげで、町と行政とのすり合わせが、少しずつですができているなという風に感じますね。

それに加えて龍助町以外の駅前周辺の人たちともちょっとずつ繋がってきて、みんな『こまつを盛り上げたい』という同じ想いがあることがわかってきました。」

小林「そうですね。自分もまちなかの動きに関われていることが嬉しいですし、想いを共有していただいているのが贅沢だなと思っています。」

「この地域は、病院や住宅も混在していますが、少しずつ新しいお店も増えてきていて、まち全体がゆるやかに変化しているのを感じます。この龍助町だけでも3軒宿があるんですよね。駅から徒歩5分の宿に泊まり、そこから3分の飲食店エリアを歩いてはしごして、また宿に戻る。そして翌日は龍助町のお店をゆっくり散策する、というコースですね!(笑)」

小林「できましたね!(笑)」

「観光地のような人混みがなく、コンパクトに地元の人とふれあいながら楽しみたいという人にはぴったりの場所かと思います。」
「最近は、さまざまな体験ができるお店も増えてきています。滝本茣蓙店では小松い草を使ったものづくりワークショップができますし、近くのお店でも手作りリングやお茶の試飲、唐揚げの食べ歩きなど、さまざまな体験が気軽に楽しめます。」

小松い草でコースターを作るワークショップ

 

「小松の人は小松愛がすごいので、ちょっと質問するといっぱい話してくれる、情報を教えてくれるんですよ。だから、ガイドマップいらないかもしれないですね(笑)。」

小林「そうですね!みんなそれぞれお気に入りの町中華やお店があって、話しかければその日のおすすめを教えてくれる。そんな出会いを楽しむのも、小松らしさかもしれませんね。」

「まだまだ話したいことはたくさんありますが、続きはぜひ小松のまちなかで。夜ごはんを食べたり飲みに行ったりしながら、もっとディープな“こまつ”を語れたら嬉しいです。」

小林「記事を読んでくださっている皆さんも、きっとこういった交流やつながりを大切にされている方が多いと思います。ぜひ一度、小松に足を運んで、この町の人や空気に触れてもらえたら嬉しいですね。本日はありがとうございました。」

 

<about>

滝本茣蓙店
住所:石川県小松市龍助町30
TEL:0761-22-1771
HP  :https://takimotogozaten.com/

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