
「KOMATSU NINE MEETING」は、地域で暮らす/働くゲストと、聞き手との対話を通して、小松の日常にある“続いていくもの・変わっていくこと”を考えていく対談企画です。
第5回目のゲストは、「勧帰寺」でご住職をされている大垣巧(おおがき たくみ)さん。

<大垣巧さん>
青森県生まれ、函館市育ち。自坊(お寺)は青森県。
京都の大学を卒業後、2001年に真宗大谷派 勧帰寺に法務員として勤務。
2017年に7月より住職に就任。
<聞き手:小林太一>
山梨県生まれ。大学を卒業後、都市銀行や農業ベンチャー企業に勤務。
2022年、小松市が公募した特定任期付き幹部職員に採用され、小松市観光交流課で勤務。
2025年6月より、(株)こまつ賑わいセンターの代表取締役社長に就任。
目次
1、「地域が変わるとガラッと変わる」お寺が集まる小松で感じることとは?
2、まちを歩くことで、巡り逢える言葉
3、「寺は誰でも入って良い場所」人の縁をつなぐ会話・対話を広げるために

1、「地域が変わるとガラッと変わる」お寺が集まる小松で感じることとは?
小林「さっそくなんですけど、小松のまちなかといった商店街も含めた小松駅の近くにはたくさんお寺があると思うのですが…」
大垣「はい。本当にたくさんあります。」
小林「そこが特徴だなと思いながら。まず勧帰寺さんについてどんなお寺か聞いてもいいですか?」
大垣「小松六ヶ寺の一つである勧帰寺は、約550年前に本願寺第5代目綽如上人の玄孫である蓮教によって創建されました。当時では宗祖親鸞聖人の歯骨を受け賜っているんですよ。」
小林「ええ!」
大垣「室町時代に建てられてから550年の間に類焼で4回燃えて、御門徒のご尽力のおかげさまで、4回建て直された寺なんです。本堂や座敷は戦時中に建てられて現在84歳の建物で、本堂は珍しく2階建てになっています。」
小林「そうなんですね。大垣さんご自身は、どのようにこのお寺に入られたのですか?」
大垣「僕自身に関しては元々、石川県でもない別のお寺の生まれで、ご縁をいただいてこの勧帰寺で務めさせていただくということになりました。さらに年数がたちまして、またご縁をいただいて勧帰寺に入る(住職になる)ということになりました。最初はもう、プレッシャーしかなかったというか。やはり歴史のある地域ですから。他のお寺さんとの兼ね合いもありますし…、どうやって目立たないようにというか(笑)」

小林「優しいですね(笑)勧帰寺さんって元々この場所に?」
大垣「いや、元々はここではないですね。」
小林「4回の焼失と再建を経るなかでもご移動があったりしたんですかね?」
大垣「はい。それでもお寺が建っていったというのは、やっぱりこの辺の御門徒さん方の浄土真宗に対するエネルギーがものすごいあったのかなと。」
小林「そうですね。小松のエネルギーって、どこが由来なんだろう?というのは来てからもずっと楽しく探ってるんですが、やはりお寺が多いというのは小松のエネルギーという気がします。勧帰寺さんにいらっしゃるなかでどういったエネルギーを感じますか?」

大垣「やっぱり御門徒さんの熱心な姿勢ですかね。報恩講(浄土真宗の宗祖・親鸞聖人のご恩に感謝し、その教えをあらためて聞くための法要)という一番大きな行事があって、こっちに来た二十数年前は本堂が満席になっていました。
僕からしたら信じられない。人があふれるくらいお参りに来られる。それくらい浄土真宗に対する信仰心や熱というのがものすごく感じられました。ただ、段々と右肩下がりにはなって。コロナ禍が重なったこともあって人が来られなくなりましたね。」
小林「まさに来週から、今年の小松の報恩講の時期が始まりますね(収録時10月)。外にのぼりが建っているのも、今となっては報恩講の時期だなという感じはありますけど、小松に来た当時は『なんやろう?』という感じで(笑)」
大垣「僕も最初はそんな感じで。同じ宗派のお寺の生まれですけど、報恩講にそんなに力を入れていなくて。地域が変わるとガラッと変わるんだなと。」
2、まちを歩くことで、巡り逢える言葉
小林「小松のまちなかのお寺って、山門の前に筆で書いたお言葉があると思うんですけど、個人的には、いま何が正解かわからない時代の中で染みる言葉が多いような気がしています。
さっきも中に入らせていただいた時に掲示が目に入ったんですけど、答えが無いわけじゃなく、問いというもの自体が正確でない、といった内容のものがあったりして、なるほどと思ったり。」

大垣「『問い』は我々の宗派では大事にされていて。1+1=2というのが一般的な答えですが、我々は『なぜ1+1になるのか』という問いを求め、応じていくという。【答える】ではなく、応じるの方の【応える】もあるじゃないですか。我々の『こたえる』はそういう意味なんですね。『なぜ』というところをまずしっかり学んでいくことが大切だとされています。」
小林「『心』が入っている方の『応え』。そういうことだったんですね…!今の時代の流れでいうと多様性という言葉も聞きますけど、答えが一つじゃない中で何を信じればいいんやろう…というのがありますよね。」
大垣「『多様性』という言葉は、危うい言葉じゃないかと思います。アバウトでもありますし。」
小林「分け隔てないというか、どんな人でも何をしてもいい、みたいな…分別ない感じの意味にも取れますよね。」
大垣「差をつけていないようで差をつけてるんですよ。比べてるんですよ、人と。比べて、自分が優位に立とうという…そういうものが出てるんじゃないかな…。そもそも『多様性を認めよう』というのが上から目線じゃないですか。」
小林「たしかに…そうですね。」

大垣「あの言葉はずっと疑問で、本当の意味での『多様性』になるのかな、と。」
小林「認めるものかどうかも、分からないですもんね。」
大垣「30年ほど前、浄土真宗における本願寺の第8代の蓮如上人という方の500回忌があったんです。そのときのテーマが『バラバラで一緒』というもので。その時に記念に出されたお念珠が、丸、三角、四角なんですよ。バラバラで。それにもちゃんと意味があり、今でいう多様性とは全然違う意味なんです。」
大垣「容姿も違うし考え方も違う、十人十色、生活や生き方もあるけどそれでも命そのものは平等ですよという。そこが第一に大事な部分。でも(最近世で使われる)『多様性』は、そこで平等になってないんですよ。」
小林「自分で定義している人から言われることと、(言葉自体を)受け入れるっていうのだとまた違う気もしてきますね。」
大垣「そうですよね。まず我々は「いのち」が平等であるという、バラバラやけど同じ「いのち」を生きていて、そこには差は無いんですよという。これが1番最初にお釈迦様が言われた言葉ですから。」
小林「小松のまちを歩くとハッとするんですよね。そういったこと(言葉)を知る機会というのも、そのまち並みも他の地域には無いですよね。」
大垣「あんまりないですよね。最近やっぱり(お寺の)掲示板を見ていく方が増えてきたなと。昨日もうちの前で立ち止まってじっと見てらっしゃる方を何組か見ましたし。」


大垣さんが心に留めているお言葉
小林「ああいう言葉って、どう考えついているのですか?」
大垣「誰かの言葉であったりとか、ある先生の言葉であったりとか、勉強してきたところから書いたりしてる方が多いんじゃないですかね。もうぶっちゃけ仏教じゃなくても漫画のセリフとか書いてるお寺さんもありますし。定義はないというか。」
小林「イラストが描かれていたり、面白いですよね。そういう表現に触れられる機会が小松のまちなかには多くて、散歩してて楽しいです。」
小林「元々エネルギーもあったかもしれないんですけど、それが紡がれ続けているような。」
大垣「そうですね。今は報恩講に来られる方も、お参りに来られる方も少なくなりましたけど、それでも大事に紡がれてきているという。世代がガラッと変わったじゃないですか。
昔の方は60歳で定年になったらほとんど家にいたりとか趣味に走ったり。だからお寺に行ってみようとか。でも今60歳で定年っていうのが少ないでしょうし、定年しても他で務めたりとか。お寺離れがどんどん進んでしまったのかなと思いますけど。」

小林「時間の長さだけでいうと、その状態って数十年の短い時間の軸であって。人は今は車で行き来してるんですけど、長い長い小松のまちなかの歴史では、歩く時間の方が長かったのかなと思うのと…。やっぱり車じゃ見れない言葉というか、気づけない事って多いなって思います。」
小林「この前、粟津駅で飲んでたんです。電車もない時間まで語り明かしてて。で、帰ろうかって時に、タクシーも遅いしなと思って歩いて帰ったんです。最初に会った時に伺ったお話の、『行き切ってみる』とか『やりきってみる』というのがすごい残ってて。歩ききってみようかなって(笑)」
大垣「素晴らしいことだと思いますよ(笑)」
小林「歩いてみたら、ここにパン屋さんできるんだとか、こういうまちなんだとか…」

大垣「いろんなことに気付けますよね、車よりも普通に歩いた方が。うちの御門徒さんも、『今まで車で職場と往復していたけど、定年退職されて家の周りを歩いてみたら感動した』と。こんな場所があったんだとか、こんな花を育てていたんだとか、そういうのはすごい大事やと思いますね。」
小林「私はよそ者として来て、小松をあとから知ったからこそできることをする立場なのですが。考えて考えて何もわからないって思ったときに自分が選んだ判断が『歩くこと』だったんですよ。で、それが今でも楽しくて。」
大垣「色んな景色がゆっくりみれるのは素晴らしいことです。自分はあんまり歩かない人だから。夜だけ徘徊してます(笑)」
3、「寺は誰でも入って良い場所」人の縁をつなぐ会話・対話を広げるために
小林「最近の小松のまちの変化とかって感じますか?」
大垣「やっぱり新幹線効果ですかね。まずお店がすごい増えてきたのと、明かりが増えた感じがします。近くのアーケードはシャッター通りになってしまっているんですけど、ぽつぽつと新しいお店が入ってきたりして。それはすごいワクワクして嬉しいです。」
小林「そうですよね。途中から小松に入らせていただいた身からしても、変化が見えることに関してはすごくワクワクします。今からこのまちってどうなってくんだろうって、色んな人と話すことが大事なのかなと思ったり。」
大垣「僕自身はあんまり人と話す機会がないんですよね。大体お勤めの後にご法話をして終わりで、そこから広がらないんですよね。時間的な問題もあって。今日も実は通しで法事が何件かあって。時間に追われているので、会話や対話というのが意外と少ないんですよね。」

大垣「でもやっぱり自分が法話だけしてっていうのはあんまり良くないとは思っています。会話・対話の中で気づきが本来生まれてくるものじゃないかなと。自分の思いとは違うことを言っていても、『なぜ?』という問いになって、そこから新たな気づきにつながっていくという。だから、会話がお好きというのは素晴らしいことだと思います。」
小林「ありがとうございます。実は今回お声がけする前も、ずっと連絡していいものかとドキドキしていて。今こんなふうに実現したのもすごく嬉しいなと思っています。僕らの世代はお寺というと特別な環境といいますか。一線引いてしまいがちですが、まちのお寺をどう捉えていけばいいか…、10代・20代・30代というような世代の我々はお寺とどのように関われば良いのかなと。」
大垣「今うちの息子が『縁会』という新しい試みをしていて、御門徒さんかどうかとか関係なく来ていただけるものなんです。それこそ若い方々に入ってきやすい場所づくりというか。そういったことが接点になっていくのかなと。」

大垣「寺は誰でも入って良い場所ですので。先入観があるとは思いますが。でも、若い観光客の方が境内に入られることもあるので、意外と興味があったりするのかなと思ったりもしますけど。」
小林「小松のまちを歩いている時は門が開かれて、普段触れられてない身からするとすごく綺麗というか。何か心惹かれるものがありますからね。」
大垣「それはもうウェルカムで。いかにそういう、若い方たちが入りやすいような形をつくっていくかが大事だと思います。そこで少しでも仏教とか浄土真宗に興味を持ってもらえるようであれば、お話ししたりもできるかなと。」
小林「まさに息子さんの恵心さんとの出会いからつながって、今こういう場(今回の対談)もあったりして。『縁会』のえんがご縁の縁だったり。それですごく近づいてみたいなという想いが強まったのはあるんですけど。『お寺は開かれた存在である』というのを聞いた時に、境内の中で自分たちと繋がりがある方達とお話しする場をつくってみたいなとか、そういうことも妄想しています。」
大垣「そういう機会があればいくらでも。解放して、我々も参加させていただければなと思います。僕自身があんまり前に出る人間ではないので、自分からあれをしようとかいうのがまずないんですね。」
小林「その中で受け入れてくださるというところの暖かさがすごく嬉しいなと思います。
大垣「それくらいしかできないので僕は(笑)…でも、寺コンといって婚活の場所として貸したこともありますよ。」
小林「おお!そこでの出会いは大事に感じられそうですね。」
大垣「実際2組ほど上手いこといって。」
小林「すごいなあ。」
小林「先ほどお寺の中にあるものを見させていただいて、まさしく本物がありますし、一つ一つが思いを持って収められたものが多いなという感じもしていて。そういう空間ってなかなか世の中無い中で、お寺の中にあるのかなと思います。」

大垣「本当にありがたいことです。『お寺は住職のものだ』と勘違いされている方もいらっしゃるんですけど、そんなことは一切ないです。お寺の代表者ではありますけど、御門徒の皆さんと一緒に支えていく。僕も門徒ですし。たまたま住職というだけであって。」
小林「まちも然りですよね。誰のものでもなく。住んでる方、来られる方みなさんのもので。そういったことを改めて考えられる時代になったなと思いながら。KOMATSU NINE MEETINGを通して色んな方たちとも会話させていただく中で小松の深い面白さを伝えていきたいと思いますので。ぜひまたまちなかで出会った際にも一緒にお話ししましょう。」
大垣「ぜひぜひ。よろしくお願いします。」
<about>
真宗大谷派 勧帰寺
住所:〒923-0923 石川県小松市東町88
TEL:0761-22-0526
HP :https://kankiji.online/
